Root Cause Analysis For Beginners
概要
3 行まとめ
根本原因分析は、できごとについて、何が、どのように、何故起こったのかの特定を助け、再発を防止する
根本原因は、潜在的なものであり、合理的に特定できるものであり、マネジメントによって制御可能なものであり、そして、推奨事項を生成することができるものである そのプロセスにはデータ収集、原因記述 (cause charting)、根本原因特定 (root cause identification)、推奨事項生成と実装 (recommendation generation and implementation) が含まれる
内容
例) バルブ A を閉めるよう指示されていたのにバルブ B を閉めてしまった操作者の場合
典型的な調査では、操作者の間違いであると結論付けられる
何がどのように起こったかは記述されているが、間違いの理由を十分には理解できていないため、再発を防ぐために何をすべきかがわからない
「オペレーターを再訓練する」、「バルブを操作するときにすべてのオペレーターに注意を促す」、「すべての担当者に作業に注意を払う必要があることを強調」 といった推奨事項が出てくるだろうが、これらは将来の再発を防ぐことはほとんどない
一般に、間違いは単に発生するだけでなく、明確に定義された原因に起因しうる
上記の例の場合、「手順は混乱しましたか?」 「バルブには明確なラベルが付けられていましたか?」 「操作者はその業務に精通していましたか?」 といった点を聞く必要がある
根本原因を特定することは、同様の再発を防ぐための鍵
時間の経過とともに、発生の母集団全体で特定された根本原因を使用して、改善の主要な対象を特定できる
根本原因の傾向分析により、体系的な改善の開発と修正プログラムの影響の評価が可能
根本原因は具体的で潜在的な原因 : 調査者の目標は潜在的な原因を特定すること。 出来ごとの原因が具体的になるほど、再発防止策にたどり着きやすくなる
根本原因は、合理的に特定できるもの : 調査はコスト効率がよくなければならない。 調査のために人的資源を占有し続けてはならない。 構造化された RCA は、調査にかけた時間を最大限有効活用する助けになる
根本原因は、管理者が修正を制御できるもの : 調査者は、「操作者のミス」 や 「機器の故障」、「外部要因」 といった一般的な原因分類を使うべきではない。 一般的すぎては打ち手を考えられないので、具体的な原因を特定すること。 また、再発防止策を考えられるように、制御可能な原因を特定すること
根本原因とは、再発を防ぐための効果的な推奨事項を生成できる原因 : 調査で特定された根本原因に直接対処する推奨事項が生成されること。 調査者が 「文書化されたポリシーと手順の順守を改善する」 というような漠然とした推奨事項に到達した場合、おそらく基本的かつ具体的な十分な原因が見つかっていないということである。 分析プロセスにより多くの労力を費やす必要がある
手順
1. データ収集
完全な情報およびできごとの理解なくして、原因要素と根本原因は特定されえない
できごとの解析のうち、主に時間をかけるのはこの部分
2. 原因要素チャート化 (causal factor charting)
補足 : チャートの例は論文中に掲載されている
このチャートは、情報を整理・分析し、調査をすすめる中での知識の乖離や不足を特定してくれる
チャートは、情報収集を始めると同時に作り始める (データ収集しながら変更されていくスケルトンチャートから開始)
チャートは、データ収集を推進する助けになる
チャートが完成すると、原因要素 (causal factor) と呼ばれる、できごとの主要な要因を特定しやすくなる
原因要素は、それが排除されるとできごとが起こらなくなるか、もしくはそのひどさを低下させるようなもの
従来の多くの解析では、最も見えやすい原因要素にすべての注目が集められていた
しかし、できごとに一つだけの原因要素があることは稀であり、寄与したものの組み合わせの結果であることがほとんどである
明らかな原因要素ひとつだけを扱った場合、推奨事項のリストは完全ではないはず
その結果、組織はできごとから学べたであろうすべてのことを学べていないため、同じできごとが繰り返される可能性がある
3. 根本原因特定 (root cause identification)
すべての原因要素を特定できたら、次はそれぞれの根本原因を特定する
根本原因マップ (Root Cause Map) と呼ばれる決定図 (decision diagram) を使用する
補足 : マップの例は論文中に掲載されている
マップは、特定の原因要素が存在する理由、あるいは発生した理由を深ぼるための質問への回答を支援する。 それにより、調査者の推論プロセスを構築する
4. 推奨事項生成と実装 (recommendation generation and implementation)
多くの場合、調査者は実装までの責任を負わないが、実装されなければ調査は無駄になる
組織は推奨事項が完遂されるまで追跡する必要がある
結果の表現
根本原因要約表 (Root cause summary tables) に収集された情報を整理できる
例は論文中に
各列の説明
最初の列 : 原因要素の一般的な説明。 この原因要素に対処する必要性を理解するための十分な背景情報も
2 番目の列 : 原因要素に関連付けられた根本原因マップを通る 1 つまたは複数のパス
3 番目の列 : 特定された根本原因のそれぞれに対処するための推奨事項
RCA 調査の最終成果物は調査レポートであることがほとんどで、原因要素チャートと根本原因要約表が必要な情報を提供してくれる